妊娠中の静脈血栓塞栓症の新たな危険因子

妊娠中の静脈血栓塞栓症の新たな危険因子

静脈血栓塞栓症とは、腕や脚などの深部静脈に血栓が発生することを指します。血栓は、肺や心臓まで移動し、生命を脅かす問題を引き起こす可能性があります。これは、妊娠中および産後の妊産婦死亡の潜在的な原因の一つです。したがって、医療提供者が静脈血栓塞栓症の危険因子を理解し、リスクの高い女性に予防策を推奨できるようにすることが重要です。
静脈血栓塞栓症の危険因子の理解を深めるために、エコチル調査に参加した103,070組の妊婦と生まれた子どものデータを分析しました。分析の結果、子宮内膜症と習慣流産の既往歴が、静脈血栓塞栓症の新たな危険因子として特定されました。切迫流産、切迫早産、早産、帝王切開術はこれまでの報告と同様に日本人にとっても危険因子であることがわかりました。

 

どのような研究なの?

エコチル調査約10万人の妊婦を対象に、妊娠中および産後の静脈血栓塞栓症の未知の危険因子を特定しました。

なぜこの研究が必要なの?

妊娠中および妊娠後の血栓症を防ぐために、妊婦とその医療提供者は、静脈血栓塞栓症の危険因子が何であるかを知る必要があります。

この研究で新しく分かったこと

静脈血栓塞栓症のこれまで知られていなかった2つの危険因子、子宮内膜症と習慣流産の既往歴を特定しました。 女性がこれらの危険因子を持っている場合、医療提供者は、静脈血栓塞栓症を防ぐために抗凝固療法等を処方することを検討する必要があるかもしれません。

今まで知られていたこと

妊娠中および妊娠後の静脈血栓塞栓症に強く関連する危険因子は、静脈血栓塞栓症の既往歴です。 その他の危険因子には、肥満、喫煙、35歳以上、3人以上の出産、全身感染症、切迫性流産、切迫性早産、早産、帝王切開による出産などがあります。 現在の臨床ガイドラインでは、静脈血栓塞栓症を経験するリスクが高い妊婦に対して、低分子量ヘパリンによる予防的抗凝固療法を推奨しています。

※本研究は環境省の予算により実施しました。本論文内容はすべて著者の見解であり、本記事内容は愛知ユニットセンターの見解・解釈であり、環境省の見解ではありません。

論文情報

Title of the paper: Endometriosis and Recurrent Pregnancy Loss as New Risk Factors for Venous Thromboembolism during Pregnancy and Post-Partum: The JECS Birth Cohort
Authors: Mayumi Sugiura-Ogasawara, Takeshi Ebara, Taro Matsuki, Yasuyuki Yamada, Toyonori Omori, Yosuke Matsumoto, Sayaka Kato, Hirohisa Kano, Takahiro Kurihara, Shinji Saitoh, Michihiro Kamijima, and the Japan Environment & Children's Study (JECS) Group
Journal:  Thromb Haemost. 2019 Apr;119(4):606-617.

論文著者

オリジナルページを見る
sdg-logo

このページの内容および論文は下記のSDGsの目標の達成に貢献します。



注目コンテンツ