妊娠中の働き方と出産までの母子の健康状態について

妊娠中の働き方と出産までの母子の健康状態について

妊娠中に働く女性は世界中で増えており、働くことが妊娠の継続や母子の健康にどのように影響するのかは重要なテーマになっています。これまでに、妊娠中の長時間労働などは妊娠や出産に悪影響を及ぼすという報告がいくつかありますが、労働時間や夜勤の影響に関する大規模調査はごく限られ、ワークライフ・バランスや母子保健の向上に役立つ科学的根拠が必要とされています。そこで本研究では、エコチル調査に参加した99,744人の妊婦のデータを分析しました。分析の結果、妊娠中の長時間労働および夜勤が、切迫流産や切迫早産などの危険因子であることが示されました。妊娠中に夜勤をしたことがある女性では、労働時間が週36時間を超えると妊娠高血圧症を発症する可能性が高くなり、週46時間を超えると胎児発育不全のリスクが高くなりました。また、夜勤に関係なく、週36時間以上働くことで、吸引・鉗子分娩の可能性が高まりました。こうした研究結果は、妊婦のワークライフ・バランスなどの向上に役立つ知見となりうるでしょう。

 

どのような研究なの?

エコチル調査約10万人の妊婦を対象に、妊娠中の勤務パターンが母子の健康にどのように影響するかを調べました。

なぜこの研究が必要なの?

これまで、妊娠中の長時間労働や夜勤の健康への影響については十分な知見が得られていませんでした。この研究のような大規模調査は、この影響の解明に役立つと考えられます。

この研究で新しく分かったこと

妊娠中に働く女性は、切迫流産や切迫早産のリスクが高くなることや、分娩中に吸引や鉗子が必要になる可能性が高くなることなどがわかりました。また、妊娠初期に長時間労働かつ夜勤をすると、胎児の成長を妨げる可能性があり、妊娠中期から後期における長時間労働は妊娠高血圧症のリスク上昇と関連することがわかりました。

今まで知られていたこと

近年では、妊娠中の長時間労働が、低出生体重児の出産、妊娠高血圧症の発症、流産、早産などのリスクに寄与することを示唆するいくつかの報告があります。

※本研究は環境省の予算により実施しました。本論文内容はすべて著者の見解であり、本記事内容は愛知ユニットセンターの見解・解釈であり、環境省の見解ではありません。

論文情報

Title of the paper: Effects of long working hours and shift work during pregnancy on obstetric and perinatal outcomes: A large prospective cohort study—Japan Environment and Children’s Study
Authors: Nobuhiro Suzumori, Takeshi Ebara, Taro Matsuki, Yasuyuki Yamada, Sayaka Kato, Toyonori Omori, Shinji Saitoh, Michihiro Kamijima, Mayumi Sugiura-Ogasawara, Japan Environment & Children’s Study Group
Journal:  Birth. 2020 Mar;47(1):67-79.

論文著者

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