妊娠中の血中カドミウムおよび鉛濃度は妊娠糖尿病と関連するの?

妊娠中の血中カドミウムおよび鉛濃度は妊娠糖尿病と関連するの?

カドミウムと鉛は体に取り込まれると様々な健康影響を引き起こすことが知られています。しかしながら、妊娠糖尿病との関連についてはまだ十分に分かっていません。この研究では、エコチル調査に参加した16,955人の妊婦の血液中のカドミウム・鉛濃度と妊娠糖尿病との関連性について調べました。血液中のカドミウム濃度が低い人でも高い人でも妊娠糖尿病の発症率には違いはありませんでした。鉛の濃度についても同様に検討しましたが、妊娠糖尿病の発症と関連はありませんでした。エコチル参加者のカドミウムと鉛の濃度は,一般的に他の研究で報告されている濃度よりも低かったため,妊娠糖尿病の発症に影響を与えなかったと考えられます。

 

どのような研究なの?

2011年から2014年の間に、妊娠22-28週の妊婦さんから採取した血液(16,955名分)を用いて、妊娠中に血液中のカドミウムや鉛の濃度が高いと妊娠糖尿病を発症しやすいかどうか、関連性を調べました。

なぜこの研究が必要なの?

妊娠糖尿病を発症した妊婦さんやそのお子さんにはさまざまな合併症を発症するリスクが高くなることが知られています。そのため、妊娠糖尿病の発症に関連する原因を調べることで、産婦人科医が妊婦さんに妊娠糖尿病について説明したり、その予防法をアドバイスすることに役立ちます。

この研究で新しく分かったこと

今回の研究では、国内の妊婦さんの血液中のカドミウムや鉛の濃度と、妊娠糖尿病の間には関連はありませんでした。これは,一般的に他の研究で報告されている濃度よりも低かったため、妊娠糖尿病の発症に影響を与えていなかったと考えられます。

今まで知られていたこと

カドミウムや鉛は、自然界に広く存在していて、それらは一定量、私たちの体内に取り込まれています。長期間に渡って多くの量が体内に取り込まれると、体に悪影響を及ぼす環境化学物質であるため、健康影響を最小限にするための農作物や魚介類の管理や安全性の確保は重要な課題です。

妊娠糖尿病を引き起こす原因としては、高年齢妊娠、妊娠前の肥満、喫煙習慣、過去に妊娠糖尿病にかかった経験など、主に個人の要因または生活習慣に関連するもので、環境化学物質による影響についてはあまり分かっていませんでした。

※本研究は環境省の予算により実施しました。本論文内容はすべて著者の見解であり、本記事内容は愛知ユニットセンターの見解・解釈であり、環境省の見解ではありません。

論文情報

Title of the paper: Association between maternal blood cadmium and lead concentrations and gestational diabetes mellitus in the Japan Environment and Children’s Study
Authors: Tomoko Oguri, Takashi Ebara, Shoji F. Nakayama, Mayumi Sugiura‑Ogasawara, Michihiro Kamijima, and the Japan Environment and Children’s Study Group
Journal: Int Arch Occup Environ Health. 92(2):209-217, 2019

論文著者

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